選手からスタッフ、新たな道を歩みそれぞれの場で活躍した広報の岩﨑紗也加さん、サブマネージャーの奥山優奈さんが、今季限りでチームを離れる。これまでの経験や、新たな体験を活かし、2人がチームのために働きかけ、積み重ねて来たことの数々。互いを知る2人だからこその素直な言葉で綴る対談。チームへ、そして応援してくださる皆さまへ。これまでと、これからにつながるメッセージ。
「苦しい時もチームのために、と動けるのがユナの才能」(岩﨑)
「ヒナさんの言葉で頑張れた」(奥山)
――選手やスタッフとして、レッドロケッツで過ごした日々はどのような時間でしたか?
岩﨑:現役では6年間、いい時も悪い時もありましたが現役時代を振り返って思い出すのはVリーグ、アジアクラブ選手権の優勝です。頂点を取るのは誰でも経験できることではない中、貴重な経験をさせていただきました。普段の練習や日常生活でもチームメイトと過ごす時間は長くて、今振り返ると、みんなが勝つため、チームのために意見を言い合ってぶつかることも結構あったんです。でもそれだけ本気だったし、なかなかそこまで自分の思いをぶつけ合える環境はないと思うので、お互いの本当の気持ちがわかって、1つの目標に向かって頑張った結果、勝利につながった。本当にいい経験でした。
奥山:私は北海道の田舎育ちの高卒で入って来たので、まずこの神奈川という都会にドキドキしていました(笑)。同期の選手にもいろいろ迷惑をかけました(笑)。そんな自分が、ここまでやってこられたこと自体がすごいことだと思うし、それは引退されたOGの方々、先輩、スタッフの皆さん、1つ1つの出会いから教えてもらったこと。プレーだけでなく、人としても学んだことがたくさんありました。ケガも多くて、選手として試合に出る期間は限られていましたが、それでも「あの時ケガしなかったら」とかはあまり思っていません。ケガをしたからこそ学ぶことが多かったし、一緒にリハビリをする中で「この時間は絶対無駄じゃない」と先輩方に教えてもらったおかげで「頑張ろう」と思えた。その時間があったからコートに立った時の幸せ、喜び、コートに入れない選手の苦しさや悔しさもわかった。いろんな立場を経験できたので、それはこれからにも活かしていけると思います。
――選手時代、お互いのことはどんな風に見ていましたか?
岩﨑:ユナ(奥山)は心の中ではいろいろ葛藤もあったのに、いつも明るいキャラクターでみんなの前では出さない。だけど1人の時はすごく考えていただろうし、苦しかったと思う。でも試合になればどこからでも人一倍声を出して、仲間のため、チームのために、と行動できる人でした。選手である以上誰でもコートに立って輝きたい。でもそうならなかった時もこらえてチームのために、と振る舞える選手はなかなかいないし、誰にでもできることじゃない。チームが劣勢の時に盛り立てるのはユナだからこそできたことで、私はそういうタイプじゃなかったので、いつもすごいなと思っていたし、ユナの持っている才能だと思いますね。
現役時代の奥山サブマネージャー
奥山:ありがとうございます。涙が出そうです。でもヒナさん(岩﨑)はすごいですよ。いつも私の気持ちをわかってくれましたよね。落ち込んでも出さないようにしていたのに、そういう時にいつも声をかけてくれるのがヒナさんでした。「大丈夫、チャンスは来るよ」という言葉がすごく嬉しかったし、私は自分の弱さを出すのが嫌だったのですが、「苦しさも出していいんだよ」という言葉に救われた。ヒナさんはいつも苦しい時に声をかけてくれて、背中を押してくれるキャプテンでした。
現役時代の岩﨑広報。2016/17シーズンはキャプテンも務めた。
“人見知り”の広報と“線引き”に務めたサブマネージャー
――現役引退後は岩﨑さんは広報、奥山さんはサブマネージャーとしてご活躍されました。それぞれスタッフとしてのシーズンを振り返ると?
岩﨑:チームスタッフとして残ることは考えていなかったので「広報をやってみないか」と言われた時も、やってみようとは思いませんでした。でも9人制バレーボールから移籍してレッドロケッツに入れたのも人の縁があってこそだし、チームに対して感謝もある。そしてもっとレッドロケッツを知ってもらい、バレーボールをする子どもたちが増えればいいな、という想いとスタッフとして恩返しすることができるなら、という気持ちで引き受けました。最初は右も左もわからないし、そもそも人見知り(笑)。いろいろ失敗して迷惑もかけましたが、わからない中でも少しずつ、出会ったその人たちが助けてくれて幅が広がりました。
例えば、地域を盛り上げるために、商店街や商業施設の皆さんと一緒になって試行錯誤しながらイベントを実施しました。とても充実した活動で、人との繋がりや自分自身の幅が大きく広がりました。
また、メディアの方々には練習場や試合会場のみならずイベントの際にもお越しいただき、チーム、選手を何度も取り上げていただきました。その他にも、「どうすればバレーボールという競技が国民的スポーツになるのか、国民の皆さんにレッドロケッツを知ってもらえるのか」ということを一緒になって考えていただき、様々なアイディアやアドバイスをいただきました。本当にありがたく、たくさんの方々のお力をお借りして少しずつですが、レッドロケッツの魅力、バレーボールの魅力を発信できたシーズンだったかな、と思います。
この2年間、今まで関わって下さった方々、広報になってつながった方々、そういうたくさんの人のおかげで頑張れたし、少し成長できたかな、と思います。
奥山:私は選手の頃からグイグイ行くタイプだったので、自分がスタッフになった以上は選手との間に線引きをしないとダメだと思っていたんです。でも実際近くにいればやっぱり助けてあげたくなっちゃうし、一歩引いて見れる立場になったからこそ、現役の時はわからなかったことが見える。「今はこうしたほうがいいんじゃないかな」と思うこともあるけれど、それは選手同士で気づくことであって、今私が言うことじゃないな、とかその状況でいろいろ考えるようになりました。私はみんなのことが大好きだし、一緒にふざけたい時もありましたが、いや、ここは待て、とか、自分なりに距離感を考えてやってきたつもりです。以前より人のことを見られるようになったり、人の気持ちをより考えられるようになったのかな、と思っています。
また、今シーズンのオンラインで行われたファンフェスでは、プロのMCの方と一緒に司会進行をさせていただき、なかなかできない経験をさせてもらい私自身の幅も広がったと思います。
岩﨑:広報ってすごく難しくて、たとえば取材や地域での活動1つとっても、チームからすればとても大切ですが、選手からすれば「練習に集中したい!」と思う時もあると思います。最初は私も「こういうお願いをしたら嫌がるかな」と思ってしまいがちでしたが、でも取材も地域活動もする意味がある。それをきちんと説明しようと思って、選手に頼む時もLINEで「明日取材だから」「明日ゴミ拾いに参加して」と送るだけではなく、ちゃんと説明する。ただやるだけにはなってほしくなかったし、選手によって人前に出るのが得意な選手もいれば苦手な選手もいるので、少しずつアプローチを変えながら、伝える。たとえば取材を受けるということに対しても、やっぱり広報という立場からすれば、殺到してさばききれないぐらい取材してもらえるチームにしたいし、チームの魅力も伝えたい。そのためには一度取材してくれたメディアの方に、この人、このチームをもっと取材したい、と思われるチームにしたかったので、選手にも「この取材はこういう媒体に載って、こういう意味があるんだよ。しかも取材のオファーは〇〇(選手)個人に来てるんだから、すごいことだよ」と伝え続けたら、選手も積極的に対応してくれた。選手時代は自分がやって見せることで伝えよう、チームを動かそうと思ってきましたが、スタッフになって改めて感じたのは選手あってのレッドロケッツだということ。選手が積極的になってくれなければできないことがたくさんあるので、協力してくれる姿勢がすごくありがたかったです。
奥山:ヒナさんの伝え方もうまかったと思います。でも今シーズンは特に選手たちが自分から積極的にしゃべるようになりましたね。SNSの動画をアップする時も選手から提案して来る機会が増えましたよね。
岩﨑:最初はカンペを出して、それを読むだけだったもんね(笑)。でもこの2シーズンはコロナ禍の影響でファンの方と接する機会も少ない。そこを理解してくれて、最近はこちらが「何秒にしてね」と抑えないといけないぐらいしゃべるようになった。取材だけでなく選手発案の企画も増えたし、ちょっとずつ変化はしてきたのかな。
奥山:選手と監督の間を取り持つのもヒナさんは上手だったと思います。取材を受ける時も、状況によっては大変でしたよね?
岩﨑:私の立場としては取材を受けたい。でもチーム状況を考えれば今は大変だから、とセーブしてしまうこともあったんだけど、そうしていると全然広がらない。最初の頃は監督に頼む前にマネージャーに「お願いできるかな?」と聞いていたけれど、そうなると今度はマネージャーの負担も増えるので、直接監督にお願いするようになったんだよね。言い方も「お願いできますか?」じゃなくて「お願いします」と攻めに行く(笑)。金子監督もチームの事を考えながら前向きに受けてくれる。「バレーボールが野球やサッカーみたく国民的人気スポーツになること」を夢にしているので監督自らアイディアをくれたりもします。それもありがたかったね。
奥山:私はそういうやり取りを見ていて、現場とヒナさんの立場を通して、こうやっていろいろなものが成り立つんだ、と陰ながら勉強させてもらっていました。
岩﨑:人のため、チームのため、ファンのために動ける選手が多いチームだよね。だから少しでも取材やイベントを通して、その良さが伝えられていたなら嬉しいな。
試合前にチーム公式SNS用の動画を撮影する岩﨑広報
試合前練習のサポートをする奥山サブマネージャー
これからも“レッドロケッツ愛”を抱いて新たな道へ
――お2人ともこれからはチームを離れますが、これからのレッドロケッツのどんなところを見てほしいですか?
奥山:コートの中で輝く選手には自然と目が行くと思うので、ウォームアップエリアやベンチ外、レッドロケッツの良さはコートにいない選手も一致団結して、コートの中の選手より喜ぶところだと思うので、そこはなくさないでほしいし見てほしいところです。選手も変わって、変化するところもありますが、大切にしてきたことは変わらず大切にしてほしいし、そういうレッドロケッツを多くの方にも見てほしいです。
岩﨑:コートの中はコートの中で厳しさを持って戦っているので、もちろん試合で注目してほしいですが、プレーだけでなく、選手たちの表情や振る舞い。レッドロケッツはコミュニケーション、チームワークを大事にしているチームなので、ベンチ外の選手もチーム1つになって戦うという思いがある。自分を表現しようとしている姿を見てほしいし、SNSでは試合の時とは違う普段のピュアな一面も出てくると思うので、そういうところも見てほしいです。
――では最後に、お2人からのメッセージ、そしてお互いに対してエールをお願いします
奥山:選手、スタッフ、両方経験させていただき、たくさんのことを学び、幸せな7年間を過ごすことができました。現役時代はコートに立てたのは少なく、私がプレーする姿を期待してくれた方にはなかなか応えられなかったのですが、どんな立場の時も温かい言葉をかけてくれて、1つ1つのコメントに元気をもらい「また頑張ろう」と思うことができました。本当に感謝しています。ありがとうございました。これからも、これまで以上にいろいろな人たちと出会うと思うので、いろいろな方から受けた影響を無駄にせず、自分の力にしていきたいです。
ヒナさんは現役時代から私が助けてほしい時、誰かに話を聞いてほしい時にさりげなく声をかけてくれる人で、泣きながら話したこともありました。特にケガをして、焦っていた時にヒナさんから「ボール練習は感覚を取り戻せる時が来る。でもそれは体があってこそだから、リハビリやトレーニングを大事にしたほうがいいよ」と言われて、「じゃあ今日は思い切ってボール練習を辞めよう」と変われるきっかけになりました。特に若い頃はボール練習さえすればいいと思いがちでしたが、それだけがうまくなる方法とは限らない。ヒナさんの言葉、取り組み方が私にきっかけを与えてくれました。先頭を切ってグイグイ前に行くタイプではないけれど、いろんな人に見えないところでアプローチしながら、言わないといけない時はビシっと言う。すごく強くて逞しい人で、素敵なキャプテンでした。おっとりして見られがちですがバンバンしゃべるし(笑)、行かなきゃいけないところはバシッと行く。現役時代も広報になってからも変わらず、強さと優しさを兼ね備えた人なので、ヒナさん、これからもよろしくお願いします。
岩﨑:涙出てくる。あ、ごめん、出なかった(笑)。本当に現役時代からいい時も悪い時もありましたが、うまく行かない時に支えてくれた人たちがいたから「このままじゃダメだ」と頑張る力をもらいました。お手紙や、会場で声をかけてもらったり、自分の名前が入ったタオルを持って応援して下さったファンの方々のおかげで苦しい時も乗り越えられました。本当に感謝しています。ありがとうございました。広報になってからも温かく見守って応援してくれるファンの方々や、現役引退して何もわからない私に広報としてやるべきことを指導してくれた上司、先輩、携わって下さった方々。いろんな人に支えられてここまでこられたと思っているし、ファンのみなさま始め、これほど多くの方々がレッドロケッツに関わり、支えて下さっているということは現役時代には見えなかったことでした。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。私とユナはチームを離れますが、引き続き私たちもレッドロケッツを応援したいし、ファンの皆さんも今まで以上にレッドロケッツを応援してほしいと思います。今まで本当にありがとうございました。
それからユナ、実は私もレッドロケッツに入って1年目の時に、結果を出せばいろんな人に認めてもらえる、結果を出さなきゃ、周りと同じ練習をしても勝てないと思って自主練で追い込んでいたら骨折してしまった。その時にアキ(秋山美幸)さんと一緒にリハビリをしていたら、アキさんから「練習だけじゃないよ。リハビリが大事だし、ちゃんと目的を持ってやらないと」と言われたのがすごく響いて、我慢することの大切さ、量だけじゃなく質が大事だということを教えてもらったの。ユナを見ていて、当時の自分とかぶる部分もあったから、同じことを伝えました。それを純粋に、素直に受け止めてすぐ行動してやってみようというのがユナのすごいところだよね。苦しんでいる人がいたらそっと寄り添うユナを見ていて学ぶことが多かったし、コートに入れない時期が多い中でもできることを精いっぱいやろう、と自分の気持ちを押し殺して周りのために動く姿が刺激になって、心を動かされた。選手としてもスタッフとしてもユナと一緒にチームを支えて活動できたことはすごく楽しくて、いい経験になりました。これからもその持ち前の明るさと元気を次のステップでも活かして頑張って下さい。これからも連絡を取り合いましょう!
奥山:もちろんです。これからもよろしくお願いします!