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【上野香織選手】選手インタビュー#02 一生懸命

コラム・記事

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RED ROCKETS HERO'S TRAJECTORY #02

一生懸命


2023-24シーズンも開幕し、リーグ2連覇へ向け走り出したNECレッドロケッツ。
インタビュー企画2人目は、2013年に入団、10年間チームを支え続けるレッドロケッツ一筋の上野香織選手。コートネームはブン。
3回の優勝を経験し、幾つもの困難を乗り越えてきた彼女の強さに迫りました。

インタビュアーは前回に引き続き、MissionaryであるOGの廣瀬七海です。



自分で考えてやることの大切さ

廣瀬:入団11年目のシーズンになります。
 
上野:気がついたら10年過ぎていました。
 
廣瀬:この11年間、ブンさんには様々な試練がありましたよね。
それを乗り越えているところが、ブンさんの強さだと思っています。
 
上野:怪我もそうだけど、2017-18シーズンの優勝の後の2年間でコーチや監督などスタッフ陣が一気に代わったことが私にとっては大きいかな。
特に大村さん(2016/17シーズンまでのコーチ)にはお世話になった。
毎日自主練を見てもらっていたので、今まで頼っていた人がいなくなった時に、「あ、もう自分でやるしかないんだ」って。
その時は、まだ新しいスタッフ陣と今みたいに関係が出来ていなかったから。今までうまく教えてくれていた人がいなくなったから自分でやるしかない、教わってきたことを今度は自分で考えてやらなきゃだと。
 
廣瀬:ブンさんの中で大村さんの存在は大きかった?
 
上野:大きいね。
バレーが上達したのも大村さんのおかげだと思っているし、他にも色々教えてもらった。
 
廣瀬:プレー以外の部分もですか?



上野:もちろんプレーもそうだけど、メンタルの部分とか、 ものの考え方とか。
高校生の時は、言われたことをただやってきたから、自分の判断や意思で行動するとか何も知らずにレッドロケッツに入団して。
1つ1つ具体的なところまで大村さんに教えてもらった。こうやるのか、こんなにストイックに自分で追い込むのか、ここまで追求するのかって。
 
廣瀬:大村さんと練習してきた中で、今でも心に残っている出来事はありますか。
 
上野:ブロックの自主練が全然できてない時があって、「もうダメだ、全然ダメ」みたいな言葉をブロックのたびに口にしていたら、大村さんから「ダメって思うから、ダメなんじゃない?」って言われて。
“うわ~!(グサッ)”って思って。「言霊だよ」と言われたし。
大村さんって普段口数は多くなくて、だからこそ、グサッと刺さることを刺さるタイミングで言われて。
 
廣瀬:心境を理解してくれている上での言葉が良いですよね。
 
上野:そう、刺さるんだよ。
もちろん今のスタッフにも本当にお世話になっているけど、チームに入団したての私を支えてくれた人達がいなくなったことで、自分で考えてやることの大切さに気付けたかな。

チームに欠かせない冷静な判断

廣瀬:6年前に優勝した2016-17シーズンの時には、大野さんや島村さんがミドルの先輩としていましたが、偉大な2人がいてもブンさんの存在は大きかったように感じました。
優勝を決めた時もブンさんは最後コートに入ってチームを助けてくれました。
また、金子さんが監督になって初めてのリーグ開幕戦は、私とブンさん一緒にスタートでしたね。
 
上野:駒沢!



廣瀬:あの時のスタートは、ブンさんとサワさん(大野選手)。あと、2020-21シーズンの3位決定戦の時も。
 
上野:あー、はい。
 
廣瀬:JTに負けて悔しかった試合でしたが、ブンさんが最後入ってきていっぱい決めてくれて、逆転こそできなかったけど、プレーはもちろん精神的にもチームの支えでした。
冷静な判断してくれるから、ブンさんがコートにいてくれるとみんな安心します。
ブンさんが思う自分の強みはなんですか。
 
上野:えーむずい(笑)
でも、冷静に判断するところは、周りから長所だとよく言っていただけるので、そうなのかな。
一応そこを武器に。
 
廣瀬:そこは本当に武器です(断言)。みんなが迷い始めた時、ブンさんは感情や私情ではなく、冷静に定まった視点で「これやろう」とスパッと言ってくれるじゃないですか。
 
上野:結構爆発する時とかあるけどね(笑)
 
廣瀬:その冷静な判断がブンさんの1番の強み。大きな存在です。
 
上野:ありがとうございます。

優勝の嬉しさと自分への悔しさ

廣瀬:ブンさんは、2014-15シーズン・2016-17シーズンの2回と、昨シーズンの計3回優勝を経験していますね。
 
上野: 2022-23のシーズンは、この11年の中で多分1番試合に出た。
 
廣瀬:あれ、そうですか。(意外)



上野:今まではほぼ途中出場みたいな感じで、スタメンもたまにしかなかった。
昨シーズン、怪我明けの年で、よく使ってもらえたなって思う。
 
廣瀬:決定率とか、勝負どころの1点で 「ここミドル欲しい」という時に得点を決めてくれていたのはブンさんだったと思います。
 
上野:ありがとうございます~。結局最後はコートに立ってなかったけどね。
 
廣瀬:ファイナルの東レ戦、スタートで出ていましたが1セット目の途中にブロックをスパイクに飛ばされて、指痛そうでしたよね?
 
上野:(指を)また脱臼したの。でもブロックする前から(脱臼しそうだと)わかった。
遅れてブロック跳ぼうとしていて、相手が石川真佑ちゃんだったから、手出したら絶対(指が)持っていかれるなと思ったけど、手出さずにはいられなくて。
案の定脱臼して、その後交代してから脱臼は自分で直した(笑)
 
廣瀬:私も見ていて、「あ、ブンさん指やった」って思いました。ブンさんは指を脱臼しているイメージがあります(笑)
 
上野:いつもやってる。もう何十回も。
 
廣瀬:その次のセットのスタートは、またブンさんがコートに入っていたから、こういうところもブンさんの強さだなと思いました。痛くても出続けるという。
 
上野:痛くないもん(笑)
 
廣瀬:私からしたら脱臼は怪我です(笑)。
怪我しても、自分がチームを勝たすんだという使命感を持ってコートに戻って立つのは、いろんなことを乗り越えているブンさんだからこその強さだなと感じました。
ただ、あの時みんなは優勝を喜んでいたけど、ブンさんの表情には「悔しさ」が感じられました。
 
上野:試合には出続けていたけど、交代する場面も多かったから。
優勝できたことは素直に嬉しかったけど、悔しさもあったな。

命かけてます

廣瀬:2年前の2021-22シーズンは膝の怪我でほとんど試合に出なかったですね。
リハビリを頑張りながら、チームを見てどう感じていましたか。
 
上野:21-22シーズンは、天皇杯・皇后杯が、年内最後の試合だったと思うけど、ミドルのコンビが全然合っていなくて、それを外から見ていた時は、もどかしいなーって。
 
廣瀬:自分だったらこうするのにみたいな。
 
上野:うーん、「自分だったら」と思うには、けがの状態的にほど遠かったかな。
試合会場でも走れなくて歩いて入場していたくらいだし。
だから「自分だったら」というよりも、「ああ、なんかもう何してんの~(汗)」って。もどかしさはめっちゃあったよ。
 
廣瀬:手術直後は床に脚を絶対につくな、から始まって。
 
上野:そうそう、もう脚への荷重禁止みたいな。
脚のリハビリは、毎週10キロずつ両脚の荷重を増やしていく。最初10キロでスタートして、自分の体重と同じになるまで荷重を増やしたら、今度は片脚で自分の体重を支えられるようになるようにトレーニング。もう松葉杖痛がすごかった。
 
廣瀬:そうですよね。両脚均等に荷重できない間は座ってのトレーニングのみでしたか?
 
上野:うん、そうね。あと、上半身。体幹強化とか。
で、徐々に歩く練習。
 
廣瀬:苦しいリハビリ期間を経て、2022年3月19日デンソー戦の途中でピンチブロッカーとして久々にコートに立ちました。
まずあんなに長期離脱したことってありましたか?
 
上野:ないかな。
 
廣瀬:そうですよね。初めてですよね。あの時コートに立った時の心境は。



上野:正直あの時のコンディションは自分的にまだコートに戻れる状態じゃなかった。
こんな状態で戻っていいのかという気持ちがすごく強くて。チームにも申し訳ないという気持ちがすごく強かった。
完全じゃないけど一応できる。そんな状態で戻っちゃった。
みんなに「復帰おめでとう」って言ってもらったけど…。
 
廣瀬:まだ100パーセントではなかった?
 
上野:金子さんに「いけるか?」と聞かれた時、試合に出たいという気持ちが勝ったから「はい、行きます」って言って。
貢献できるかわからないのにコートに入ってしまった、みたいな気持ち。
 
廣瀬:ブンさんの苦しいリハビリ期間を知っていたから、ブンさんがコートに入れたことに、まずは1歩を進めたんだなと思って、すごいお祝いしたのを覚えています。
きっと先の試合のこととかも考えたうえで、冷静な判断してくれる選手を金子さんは入れたかったんだと思います。
怪我で長期離脱したからこそ、準備やトレーニングの大切さを人一倍実感しているブンさんが必要だったと。
昨シーズンはスタートからブンさんはずっと出ていましたが、日々の練習でも、 1番早く体育館に来てトレーニングをしていますよね。
 
上野:そうね。これ以上身体を削らないように。
 
廣瀬:パフォーマンスを上げることに注力しているように感じました。
 
上野:命かけています。
 
廣瀬:試合前のルーティンは決まっているんですか?
 
上野:試合前だからとかじゃなく、毎日一緒。
試合では時間も限られているから、出来る限り練習の時と同じことをするようにしている。
朝することも、私の中では決まっている。
 
廣瀬:知りたいです!
 
上野:臀部トレーニングと体幹。
 
廣瀬:やっぱり体幹が1番?
 
上野:それはもう里さん(パフォーマンスアーキテクト ハイパフォーマンスディレクター) の影響ですね(笑)
「体幹しろ!体幹しろ!」って、最初は言われてやっていたけど、続けているうちに体幹が鍛えられてきて、それがどれだけ大切か実感した。
あ、なるほどね、みたいな。
 
廣瀬:では昨シーズンのキレキレの好調の理由は体幹ってことでいいですか?
 
上野:はい!
体幹はもう死ぬほどやりましたね。まだまだって言われるけど。

自分のために

廣瀬:私から見てブンさんは今いるメンバーの中でも人一倍NEC愛があると感じます。
NECレッドロケッツに対しての愛もそうだし、先輩方の思いも1番受け継いでいるなと思います。
NECレッドロケッツで11年バレーを続けている思いを聞きたいです。
 
上野:それこそ高校生の時下手くそだった私をチームに入れてくれて、 ここまで育ててくれたのはNECなので、その恩はあります。
とてもとても。入団した頃の先輩方にも感謝しかない。
根性ひん曲がってた私を、正してくれて、心が折れていたら、話聞いてくれたり、寄り添ってくれたりして。
 
廣瀬:それと全く同じことをブンさんは私にしてくれました!
 
上野:全然そういうつもりはないんですけどね。
でも、自分が経験してきたことがあって、その中で自分にできることがあればと思って過ごしていたら、11年もいてしまって…。
まあ、そういう周りの人への恩は、どのチームも色々あるかもしれないけど、NECにいてよかったなと思う部分かな。
いろんな人に助けられて、いろんな人のおかげでここに入れて。
 
廣瀬:今、ブンさんの原動力はなんですか。
 
上野:改めて考えると面白いね…なんで私は頑張っているか。
去年まではずっと『家族のために』っていうテーマが自分の中にあって、それでやってきた。
でも今年はちょっと考え方を変えて、『自分のために』というのをテーマに取り組んでいます。
昨シーズンまで、家族のため、チームのためにやってきた今までを振り返った時に、ふと、来年は自分のためにやってみようかなと思って。
今シーズン始まった時に気持ちの切り替えが難しくて、「積極的に切り替えていこう」とか「今シーズンはどうやっていく」みたいなことも、最初は考えられなかった。
でも、いつの間にかコーチとの面談で今シーズンどうしていくという話をしていくうちに、「自分は今シーズンこうする」みたいなのが自然と出てきた。
 
廣瀬:今シーズンどうするんですか?(興味津々)

上野:数字の部分もそうだし、フィットネスの部分の目標についても、特に自分で考えていたつもりはなかったけど、「何月にはこうして、9月には全体で入って」って勝手に口が話していて、自分はこうするんだな、みたいな。
 
廣瀬:自然と冷静な判断ができていたってことですよね。

上野:一応、そうですね。逆に、考えない方が冷静な判断していたかもしれない(笑)
 
廣瀬:『2連覇』とか『王者としてプライドを持って』というフレーズをよく選手・スタッフから聞きますが、それはプレッシャーになりませんか。
 
上野:あんま気にならないんだよね。気にしなきゃいけないのかもしれないけどさ。
優勝は目指すけど、去年優勝したから強いとかは思わず、一生懸命やる。
一生懸命やらないと勝てないから。優勝したことを一回忘れるくらい。
 
廣瀬:初心に戻って。
 
上野:そう、 チャレンジャー。“勝ってもチャレンジャーでいること”
一生懸命やって、その結果優勝したら、「あ、2連覇だった」くらいの気持ちで。
 
廣瀬:最後に、今シーズンの目標をお願いします。
 
上野:個人の目標は、「去年よりもハイパフォーマンス」。
それを維持し続ける安定したプレー、安定してコートに出続ける人になりたいです。
チームは、もちろん優勝もそうですけど、優勝するために努力を惜しまず一生懸命やることが大事だと思います。
過程も大事だと思うので、結果を取るために過程を怠らずやっていきたいなと思います。
 
廣瀬:応援しています!ありがとうございました!
 


自分のために頑張ってきた選手がベテランになり、家族やチームの為に頑張るという順序が一般的ではないでしょうか。
上野選手はその逆で、若いころに家族やチームの為に戦い、色々な経験を積んだ今、改めて“自分の為に戦う”と語ってくれた部分。
クールな上野選手の内に秘めたその言葉に、まだまだ成長していく期待感が湧きました!
 
次回のインタビューは甲萌香選手野嶋華澄選手の同級生コンビです!お楽しみに!
 これまでのインタビュー記事
【柳田光綺選手・前編】選手インタビュー FOR THE TEAM~自分自身を超えて~
【柳田光綺選手・後編】選手インタビュー FOR THE TEAM~自分自身を超えて~


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